ネタバレを含みますので、未クリアの方はご注意ください。
『クロノ・トリガー』に登場するサラ。
古代ジール王国の王女であり、魔王ことジャキの姉でもある人物です。
登場する時間はそれほど長くありませんが、『クロノ・トリガー』だけでなく、その続編『クロノ・クロス』まで含めると、シリーズ全体でも極めて重要な人物であることが分かります。
なぜ魔王はラヴォスを追い続けたのか。
マールが持つペンダントはどこから来たのか。
海底神殿崩壊後、サラはどこへ消えたのか。
そして『クロノ・クロス』のキッドとは何者なのか。
これらの疑問を追っていくと、その中心には常にサラがいます。
今回はサラの正体から、ジール王国で起きた悲劇、魔王との関係、そして『クロノ・クロス』へ続く彼女の運命まで解説します。
目次
サラとは?
サラはB.C.12000年に栄えた魔法王国ジールの王女です。
女王ジールの娘であり、弟はジャキ。
ゲーム内では、ジールの人々からも特別な魔力を持つ人物として認識されています。ジール王家にはサラとジャキという二人の後継者がおり、サラの魔力が非常に強大であることも住民の会話から分かります。
しかし、サラの最大の特徴は魔力の強さではありません。
魔法を持つ「光の民」が魔法を持たない「地の民」を見下すジール王国において、サラは地の民にも分け隔てなく接する人物として描かれています。
母である女王ジールがラヴォスの力へ傾倒していく一方、サラはその危険性を感じながらも母に逆らいきれずにいました。
強大な力を持ちながら、その力を自分のために使うことができない。
それがサラという人物の悲劇でもあります。
魔王ことジャキの実の姉
サラを語るうえで欠かせないのが、弟ジャキとの関係です。
ジャキこそ、後に中世で魔族を率いる「魔王」になる人物です。
古代にいた頃のジャキは無口で他人を寄せ付けない少年でしたが、サラには強く心を開いていました。
ジールの住民も、ジャキにとってサラと愛猫アルファドが特別な存在だったことを語っています。
一方のサラも、ジャキを非常に大切にしています。
不吉な「黒い風」を感じ取ったジャキに対し、サラはお守りを渡し、「いつも一緒にいられればいいのに」という思いを伝えています。
後の魔王からは想像しにくいかもしれません。
しかし魔王の人生をたどると、その原点には常に姉サラがいます。
女王ジールはなぜ変わってしまったのか
サラとジャキの母である女王ジールは、もともと現在のような人物ではなかったことが示唆されています。
ジャキ自身も、母について「姿は母でも中身は変わった」という趣旨の言葉を口にしています。
女王を変えていった最大の要因がラヴォスでした。
ジール王国は当初、自然エネルギーを利用して高度な魔法文明を築いていました。
しかしやがて女王ジールは、地中深く眠るラヴォスから莫大なエネルギーを取り出すことを望むようになります。
そのために作られた装置が魔神器です。
そして魔神器を海底神殿へ移し、ラヴォスへさらに接近することで、より強大なエネルギーを得ようとしました。
目的は永遠の命。
つまりジール王国は、ラヴォスの力によって永久に繁栄する王国を作ろうとしていたのです。
サラは魔神器を動かすために必要だった
ここで重要になるのがサラです。
魔神器は誰でも扱える装置ではありません。
サラ自身が「自分がいなければ魔神器は動かない」と語っており、彼女の力が装置の運用に不可欠だったことが分かります。
サラは魔神器の危険性を理解していました。
一度は母に背き、クロノたちに協力しようとします。
しかし最終的にはダルトンによって連れ戻され、海底神殿で再び魔神器を動かすことになります。
つまりサラは、自ら望んでラヴォスの力を利用していたわけではありません。
母を止めたい。
しかし母を完全には見捨てられない。
弟ジャキも守りたい。
王国の人々も救いたい。
さまざまな思いの間に挟まれながら、サラは破滅へ向かうジール王国の中心に立たされてしまいます。
海底神殿で起きた悲劇
海底神殿では、魔神器がラヴォスへ接近したことで膨大なエネルギーが流れ込みます。
サラはその力の危険性を訴えますが、女王ジールは止まりません。
そこへ現れるのが、預言者としてジール王国へ潜入していた魔王です。
魔王の本当の目的はラヴォスを倒すことでした。
なぜなら魔王こそ、かつて古代でラヴォスによって別の時代へ飛ばされたジャキだからです。
魔王はついに宿敵ラヴォスと再会します。
しかし、その力はまったく及びません。
クロノも仲間たちを守るためラヴォスへ立ち向かい、命を落とします。
そしてジール王国そのものも崩壊します。
この海底神殿事件によって、ジャキだけでなく三賢者も異なる時代へ飛ばされることになります。
ところが、サラだけは行方が分からなくなります。
クロノたちは最後までサラを救えなかった
ここは『クロノ・トリガー』を考察するうえで非常に重要な部分です。
クロノたちは多くのものを救いました。
未来をラヴォスによる滅亡から救います。
クロノ自身も死から取り戻すことができます。
ロボの未来を変えることもできます。
カエルと魔王の因縁にも決着をつけられます。
しかしサラだけは、最後まで明確に救うことができません。
SFC版『クロノ・トリガー』では、海底神殿事件後のサラの運命はほとんど分からないまま物語が終わります。
そして、この「サラはどこへ行ったのか」という疑問こそ、後に『クロノ・クロス』へつながっていきます。
DS版で明らかになる「夢喰い」
ニンテンドーDS版以降の『クロノ・トリガー』では、新たなボスとして「夢喰い」が登場します。
ラヴォスを思わせる巨大な存在と、その内部に囚われたサラ。
そこへ魔王が現れます。
魔王にとって、長い年月をかけて探し続けてきた姉との再会です。
しかし、サラを救うことはできません。
追加エンディング「夢の終わり」では、夢喰いとの戦いの後、魔王が記憶を失った状態で旅立つ様子まで描かれています。
SFC版では謎だったサラの運命が、ここで続編へつながる形で描かれ始めます。
サラはラヴォスと融合していた
その答えをより明確に描いたのが『クロノ・クロス』です。
『クロノ・クロス』では、ラヴォスとサラが時の闇で融合し、「時喰い」へとつながる存在になったことが語られます。
ベルサーは、ラヴォスとこの星の生命体が融合することで「時喰い」という新しい生命体が生まれ、最終的には時空そのものを喰らう存在になると説明します。
つまりクロノたちはA.D.1999年に世界を滅ぼすラヴォスを倒しました。
しかし、それによってラヴォスにまつわるすべての問題が終わったわけではなかったのです。
時の闇では、サラがラヴォスに取り込まれ、新たな脅威が生まれようとしていました。
キッドはサラから生まれた存在
さらに『クロノ・クロス』の物語へ大きく関わってくるのがキッドです。
キッドとサラは単に容姿が似ているだけではありません。
『クロノ・クロス』終盤では、サラが自らの分身となる存在を生み出して世界へ送り出したことが明かされます。
それがキッドです。
作中では「daughter-clone」と表現され、キッドがサラから生み出された存在であることが明確に説明されています。
そして後発版『クロノ・トリガー』の追加ムービーでは、ルッカが森で赤ん坊を発見する場面があります。
この赤ん坊がキッドです。
つまり、
サラ
↓
ラヴォスと融合
↓
キッドを生み出す
↓
ルッカが赤ん坊のキッドを発見
↓
キッドがルッカのもとで育つ
↓
『クロノ・クロス』へ
という流れになります。
『クロノ・トリガー』と『クロノ・クロス』をつなぐ中心人物こそ、サラなのです。
マールのペンダントもサラにつながっている
もうひとつ忘れてはいけないのが、マールが持っているペンダントです。
物語序盤では、単なるマールの大切な持ち物に見えます。
しかし古代ジールへ到達すると、サラが同じ形のペンダントを持っていることが分かります。
サラのペンダントは魔神器と同じ赤い石から作られたもので、サラの力によって反応します。
マールはガルディア王家の王女です。
つまり物語冒頭から登場していたペンダントそのものが、古代ジールと現代をつなぐアイテムだったわけです。
そして『クロノ・クロス』では、キッドもまたサラにつながるペンダントを持っています。
シリーズを通じて、サラの存在はペンダントという形でも受け継がれています。
魔王はラヴォスへの復讐だけを望んでいたのか
『クロノ・トリガー』序盤では、魔王はラヴォスを呼び出そうとする悪の存在のように描かれます。
しかし物語後半で真実が逆転します。
魔王はラヴォスを呼び出して世界を滅ぼそうとしていたのではありません。
自らラヴォスを倒そうとしていたのです。
幼いジャキからすれば、ラヴォスは自分からすべてを奪った存在です。
故郷ジール。
母。
幼い頃の生活。
そして何より姉サラ。
そのため魔王とラヴォスの戦いは、単純な世界征服の物語ではありません。
ジャキという一人の少年が、人生そのものを狂わせた存在へ復讐する戦いでもあります。
そしてDS版まで含めると、魔王の物語の最後に待っているのもサラです。
長い時間を超えて姉へたどり着いたにもかかわらず、結局救うことができない。
だからこそ、サラと魔王の物語には『クロノ・トリガー』でも特に強い悲劇性があります。
サラとは「クロノたちが救えなかった人物」である
サラは『クロノ・トリガー』本編だけを見ると、古代編に登場する一人の王女です。
しかしシリーズ全体を見ると、その存在感はまったく違って見えます。
魔王の人生を決定づけた人物。
ジール王国の滅亡に巻き込まれた人物。
ラヴォスと融合してしまった人物。
キッドへつながる人物。
そして『クロノ・クロス』の物語そのものを生み出すきっかけとなった人物。
クロノたちはラヴォスを倒し、未来を救いました。
それでも救えなかった人物が一人残った。
それがサラです。
だからこそ『クロノ・クロス』は、まったく別の主人公による新しい物語でありながら、『クロノ・トリガー』から続く物語でもあります。
クロノたちが救えなかったサラを、今度は別の時代、別の世界、別の仲間たちが救おうとする。
そう考えると、サラという一人の王女の運命こそが、『クロノ・トリガー』から『クロノ・クロス』へ受け継がれた最も大きな物語のひとつなのです。